猫の塩分摂りすぎはよくない!とよく言われます。
しかし、なぜ猫に塩分がよくないのかちゃんとした理由を知らなかったり、
よくないと聞いたから…と、やみくもに塩気を避けている飼い主さんもいらっしゃるんですよね。
確かに猫の塩分摂りすぎは良くないのですが、まったく摂らないのも体に悪影響を及ぼします。
今回はなぜ猫に塩分がよくないといわれるのか、また実際に猫に必要な塩分はどれぐらいなのかなど、猫と塩分の関係性について解説します。
猫に塩分がなぜよくないの?
塩分の濃いものは猫の体に良くない。
なんていわれますが、なぜ猫の体に良くないのでしょうか?
猫が塩分を摂りすぎるとどうなるのか
猫はもともと水分をあまり摂取しない動物であるため尿が濃く、腎臓に負担をかけやすい体のつくりになっています。
腎臓は血液をろ過して尿を作り、血中の老廃物を体外に排泄する役割をになう臓器ですが、
濃くなった尿をろ過するよりも、薄い尿をろ過することで老廃物を少しずつ処理する方が負担が少ないんです。
高齢になると腎不全になる猫が多いのは、尿が濃いために日常的に腎臓に負担がかかりやすくなっているからです。
塩分の摂取が猫に良くないといわれるのは、塩分を摂ることで血圧が上昇し、
ただでさえ負担がかかっている腎臓にさらに負担をかけてしまうから。
塩分を摂取すると体内で塩化ナトリウムとして吸収され、血液中のナトリウム濃度が上がります。
すると水で濃度を薄めようとする作用がはたらき、血圧が上昇します。
高血圧が続くと腎臓の血管に負担がかかり、腎機能が低下しやすくなるんです。
もちろん、適度な塩分摂取であれば問題はありませんが、
猫が大量の塩分を摂取することは、腎臓の負担を増やしてしまうことにほかなりません。
猫に塩分が良くないといわれるのは、こういうわけです。
塩分はできるだけ摂らせない方が良い?
猫が塩分を過剰に摂取することはよくありませんが、だからといって塩分を全く摂らせないのも考えもの。
塩分、具体的には塩に含まれるナトリウムは体に必要なミネラルの1種であり、
カリウムとともに体内の水分量のバランスを調整する働きや、血液を弱アルカリに維持する働き、
また消化促進、心臓や筋肉の働きを調節する働きなどがあります。
不足すると倦怠感が起こったり、脱水症状や血圧低下、筋肉異常などさまざまな不具合が起こりやすくなります。
ともすれば命にも関わるため、一定量の摂取は必要なのですが、
キャットフードなどを用いて食事をしていてナトリウムが欠乏することは稀です。
なので摂りすぎの方が問題になりやすいのですが、
だからといって極端に控えすぎないようにしましょう。
猫に必要な1日に摂取しても大丈夫な塩分量を把握するには?
よく問題にされる塩分ですが、正確にいえば問題となるのはナトリウム量です。
塩分とは、ナトリウムと塩化イオンが結合した塩化ナトリウムのことをさしており、ナトリウムは塩分に含まれる成分の一部なのです。
猫の1日の摂取カロリーさえわかれば、1日に摂取しても大丈夫なナトリウム量は計算式で簡単に導きだせます。
ナトリウム量から、さらに摂取しても大丈夫な塩分量を導き出すことも可能です。
猫が1日に必要とするナトリウム量、塩分量の求め方
猫が1日に摂取しても大丈夫なナトリウム量、塩分量の計算式は以下のとおり。
猫の1日の摂取カロリーについては、キャットフードのパッケージなどに記載されている、
1日の給与量から計算したものを使用してみてください。
【猫が1日に必要とするナトリウム量を出す計算式】
3.1 × 1日の摂取カロリー = ナトリウム量(mg)
【ナトリウム量から塩分量を出す計算式】
ナトリウム量(mg)×2.54 ÷ 1,000 = 塩分量(g)
飼っている猫が必要なナトリウム量、もしくは塩分量をこの式に当てはめて計算してみましょう。
まず、飼っている猫の1日分のカロリーからナトリウム量を算出し、さらにそのナトリウム量から塩分量を割り出すことができます。
mg(ミリグラム)、g(グラム)と単位が異なる点に気を付けてくださいね。
1日に200キロカロリーを摂取する健康な猫の場合
例えば、1日に200キロカロリーを摂取する健康な猫の場合だと…
3.1 × 200(キロカロリー) = 620(mg)
この猫が1日に必要なナトリウム量は、620mgだということがわかります。さらに…
620(mg)× 2.54 ÷ 1,000 = 1.5748(g)
ナトリウム量を塩分量に換算すると、1日におよそ1.6gに満たないくらいの塩分量であれば、摂取しても大丈夫ということになります。
現在お使いのキャットフードに記載されている、塩分量を確認してみると良いでしょう。
ちなみにキャットフードのナトリウム量は%で記載されていることが多いのですが、
例えば猫に与えているフードのナトリウム量が0.5%だった場合、
1日の給与量の0.5%分がいくらであるかを求めることで、そのキャットフードから猫が摂取する1日のナトリウム量がわかります。
ナトリウム量がわかれば、先でご紹介したナトリウム量から塩分量を出す計算式により、塩分量もわかるはずです。
計算する時には、ナトリウムや塩分の単位(gやmg)の違いに気を付けてくださいね。
海外製のフードには塩分量は「sodium」という名前で記載されていますので、その数値を見てください。
【計算例】
ナトリウム量が0.5%のキャットフードを、1日に50g与える場合
1日に摂取するナトリウム量: 50g × 0.5% = 0.25(g)
1日に摂取する塩分: 0.15(g)× 2.54 = 0.635(g)
1日分のフードに含まれる塩分量が計算式で出した数値を超えるようなら、塩分量が多いフードがといえます。
先にあげた猫の例でいうと、1日に摂取しても大丈夫な塩分量が1.5748gですから、
この猫の給与量が50gの場合、ナトリウム量0.5%のキャットフードの塩分量「0.635g」という数値はその範囲内におさまっており、適量だといえます。
実際にはおやつや手作りごはんなどで塩分をとることもあるでしょうから、
その辺りの塩分量も考慮する必要があります。
補足として、AAFCO(米国飼料検査官協会)の基準では、キャットフードの塩分量は最低0.2%以上になるように定められており、
多くの腎臓をケアするタイプのフードは、ナトリウム量を0.3%くらいに抑えたものが多いようです。
特に腎臓が心配な猫は、先ほどの計算式で導き出される1日の塩分摂取量を目安とするのではなく、
AAFCOの基準や腎臓ケアのフードの数値を参考に、ナトリウム量の少ないキャットフードを選ぶのが良いでしょう。
キャットフードや猫の嗜好品の中にはかなり塩分がきついものがある
飼い猫に必要な塩分量を把握したうえで、市販されているキャットフードや、
お使いのキャットフードの塩分を確認された方もおられるのではと思いますが、どうでしょうか?
意外と塩分がきついフードもあるということに、気づかれた方もおられるのではないでしょうか。
肉食動物である猫には甘味を感じる味覚が存在せず、わかるのは塩味・苦味・酸味だけ。
そのため、特に嗜好性を重視した市販のキャットフードでは、食いつきをよくするために油分や塩分を多めに配合して作られています。
実際、キャットフードを食べてみると意外と塩気が効いていることに驚くはず。
猫がおいしそうにご飯を食べる姿をみて、嬉しくなる飼い主は少なくないと思います。
食いつきが良いと、そのフードをまた買ってあげようと思いますよね?
ただ、猫には塩分がよくないと言われていながら、実際のフードには多くの塩分が使われていることも少なくはないため、
キャットフードや猫の嗜好品を選ぶ際には成分表示欄をよくみましょう。
特におやつ類は注意が必要です。
手作りご飯の塩分量がわからない…塩分測定器で塩分をチェック!
キャットフードならばともかく、手作りご飯を与えることが多いご家庭だと、塩分の把握も難しいです。
そんな場合におすすめなのが、塩分測定器。
人間用として売られていますが、ペット用としてももちろん使えます。
塩分測定器は自分で作ったご飯をはじめ、猫缶やドライフードなどの塩分量の数値がチェックできる機器です。
機器によって精度が異なること、また液状に近いものでないと正確に測定できない場合があるため、
誤差などを考えると確実な塩分の値としてみるのはちょっと怖いのですが、大まかな目安にはできるはず。
猫を飼っていらっしゃる方の中で塩分測定器をお持ちだという方、結構多いです。
手作りのおやつやご飯を与えることがあるという飼い主さんは、持っておいても無駄にはならないと思います。
いまさらですが、猫の塩分の摂りすぎは本当に危険なの?
ここまで、猫の塩分摂りすぎが良くないといわれる理由や、猫に必要な塩分量(ナトリウム量)の計算の仕方についてお話ししました。
ここまで色々と書いておいてなんですが、そもそも猫の塩分の摂りすぎは本当に危険なのでしょうか?
人間もそうであるように、日常的に塩分過剰な食事を与えるのは絶対によくありません。
ただ猫が健康である限りは、日々そこまで神経質にならなくてはいけないかというと、実はそんなことはないのですよね。
一時的に塩分を摂りすぎたとしても、猫の体にはその塩分を自然に排出するためのシステムがきちんと備わっているためです。
なので答えは、健康な猫が一時的に多少塩分を摂りすぎる程度なら問題はないということになります。
余分な塩分は体外に排出される
ミネラルのひとつであるカリウムには、塩分(ナトリウム)排出作用があります。
たとえ一時的に塩分を摂りすぎたとしても、栄養バランスの良い食事を摂っている健康な猫であれば、
カリウムの働きによって余分なナトリウムが尿として排出されます。
つまり、塩分を摂りすぎたと思ったら、水分をたくさん摂らせるようにすれば問題はありません。
もちろん、それが日常的になってしまうのは腎臓に負担をかけるため、NGです。
またすでに腎臓が悪くなっている猫、体の機能が弱った病気の猫はやはり塩分を摂りすぎてはいけませんが、
そうでないのなら毎食毎食神経質になる必要はありません。
塩分を余分に摂らせることにメリットはない
猫はもともと暑い地域で暮らしていた動物で、汗をかきにくく水をあまり摂らなくてもいいように進化してきました。
塩分を汗や尿としてすぐに排出できる人間ほどは、塩分を必要としていないんです。
なので、健康な猫が多少塩分を摂りすぎる程度なら問題はないとはいっても、余分に摂らせることにメリットはありません。
あえてメリットをあげると、塩分の濃いおやつなどを与えると喜んで食べるということくらいでしょうか。
飼い主も猫が喜ぶと嬉しいと思います。
でもそれって、猫のためにはならないのですよね。
特に市販の猫のおやつの中には、驚くくらい塩分がきついものもあるため、
頻繁におやつを与えているという場合は、いま一度塩分量を確認してみてください。
飼い猫に必要な塩分量を把握しておこう
猫に塩分はよくない…とはいっても、実際には塩分を多めにとっていても長生きする元気な猫もいますし、
かと思えば若いころから食事に気をつけていても、早くから腎臓を悪くしてしまう猫もいます。
全ての猫にとって塩分の取りすぎがよくないことは事実ですが、
それで病気になるかどうかは、もともと猫が持って生まれた体の強さや体質の関係が大きいのだと思います。
まあでも、塩分の摂りすぎが続いてよいことは1つもありません。
なので猫の健康を守るためにも、できれば飼い猫に必要な塩分量を把握したうえで、
キャットフードを選ぶ際は塩分量もチェックするようにしましょう。
塩分の多いおやつは、たまのご褒美や楽しみとして与えること、
また人間の食事は猫には確実に塩分過剰であるため、与えないようにすることです。
正しい知識を持って、猫との暮らしを楽しんでいきたいですね。