肉食動物である猫には、必ずしも野菜は必要ではありません。
しかし、野菜を食べることで得られるメリットも存在します。
そうでなくとも、野菜ってヘルシーで体に良いイメージがありますよね?
なので猫に与えたいと思う飼い主もいるはず。
ただ猫に野菜を与えるのなら、猫にとっての野菜がどういうものであるのかを知っておく必要があります。
中には食べさせてはいけない野菜もあるんです。
今回は、猫に野菜を与える場合に知っておきたいことと、与え方やおすすめの野菜について解説します。
猫にとっての野菜って?栄養的に必要なもの?
私たち人間にとっては、野菜は必要な栄養を摂るためになくてはならないものですが、
猫には必ずしもそうとは言えないかもしれません。
以下をご覧ください。
猫に野菜は必要なのか?
猫は完全肉食動物なので、基本的に肉や魚などの動物性たんぱく質を摂取すれば生きていけます。
では、野菜はまったく必要ないのか?というと、そうとも言いきれません。
猫が外で暮らしていた頃は、狩りをして小動物を捕まえ、内臓も丸ごと食べていました。
内臓の中にはその動物が食べた穀類や草が含まれており、
それを食べることで自然にビタミンや食物繊維を摂取できていたんです。
しかし、もし現代の飼い猫が肉や魚を与えられて食べるとしたら、ほとんどの場合は肉の部位のみだと思います。
当然ですが、肉の部位には内臓にあるようなビタミンや食物繊維は含まれておらず、
それらの栄養素を摂ることはできません。
そのような食生活が続くと、当然ながら特定の栄養が不足してきます。
猫は人間と違って一部のビタミンのみ、体内で作り出すことができますが、
そうではあっても体の働きを円滑にするためにはビタミンやミネラルの摂取が必要であり、
肉だけ食べていれば良いというわけではないのです。
ただ現代では、栄養バランスがしっかりと考えられた「総合栄養食」があります。
総合栄養食を食べていれば、基本的な栄養はまかなうことができるため、
ビタミンを摂るために動物の内臓を食べる必要はありません。
総合栄養食で栄養は十分に摂れているのですから、野菜も必要はないということになります。
しかし、「野菜入り」を売りにしたフードが売られていることからもわかる通り、猫が野菜を摂ることにはメリットもあるんです。
野菜で食物繊維や水分補給ができる
ご存知の通り、野菜や果物にはビタミンやミネラルをはじめ、食物繊維や水分が多く含まれています。
肉や魚を食べるだけでは得られない、栄養素の摂取が可能なのです。
特に室内飼いの猫は慢性的に運動不足の傾向があり、またドライフードを主食とすることで水分摂取も少なくなりがちであるため、
便秘になりやすいといわれています。
野菜に含まれる食物繊維や水分は、そんな便秘解消に効果的です。
野菜を食べさせることは猫の気分転換にもなる
栄養的には総合栄養食であるドライフードだけを食べていればよいわけですが、
猫にだって好みがありますし、同じフードばかりでは飽きてしまいます。
猫って結構好き嫌いが激しく、フードに飽きたり気に入らなくなったら見向きもしなくなることがありますが、
フードに飽きて食べてくれなくなった時、野菜や果物をトッピングしただけで食べ出す子もいるんです。
野菜がおいしいからなのか?それとも目新しいからなのでしょうか、はっきりとした理由は良くわかりませんが、
猫によっては白菜やブロッコリーが大好物で、ムシャムシャと食べる子もいるんですよ。
野菜はローカロリーでフードのかさ増しにもなるため、ダイエットしている猫にも向いています。
猫に野菜をどうやって与える?
猫に野菜を与えるには、野菜入りのキャットフードを使うか、野菜や果物を自分で加工するかの二通りの方法があります。
野菜入りのキャットフードを使う
野菜入りのキャットフードは、手軽に使えるのが魅力。
野菜入りというだけで「健康によさそう」と考える人も多いでしょう。
しかし、フードに加工される時点で野菜は加熱され、抗酸化物質や熱に弱いビタミンは壊れてしまいます。
すべての栄養素がなくなるわけではないものの、生で野菜を摂取するのに比べるとメリットは少なくなりますね。
野菜や果物を調理して与える
もうひとつが、野菜や果物を調理して与える方法です。
加熱して与えるにしても、キャットフードよりも加工度が低いことがほとんどであるため、
栄養的な面では勝りますが、食事の準備をする手間がかかります。
週に1回のおやつとして考えるなど、飼い主の負担にならないペースで行うようにしましょう。
なお、猫には食べてはいけない野菜があるほか、病気の有無や体質によっては沢山与えない方が良い野菜もあります。
飼い猫に与えても大丈夫な野菜は何なのかを把握したうえで、与えるようにしてください。
猫に与えてはいけない野菜(果物)について
猫に絶対に与えてはいけない野菜、また与えすぎはNGだとされる野菜について解説します。
ねぎ属の野菜
どこの家庭にも1つや2つは冷蔵庫の中に入っているのではと思われる、ねぎ属の野菜。
ねぎ属の野菜とは、玉ねぎや長ねぎなど「ねぎ」のつく野菜をはじめ、ニンニクやニラなどもねぎ属に属しています。
これらの野菜に含まれる、アリルプロピルジスルフィドをはじめとする成分を猫が摂取することで、
溶血性貧血を起こしたり、血尿や下痢といった症状を起こす場合があります。
ネギに含まれる成分が赤血球中のヘモグロビンを破壊するからなのですが、
運が悪いと死に至ることもあるため、厳重に注意しなくてはなりません。
生だけではなく、加熱したものもNGです。
また加工品に含まれるような、少量のエキスも避けてください。
アボカド
アボカドの種や皮などにはペルジンと呼ばれる成分が含まれており、
猫が食べると呼吸不全や胃腸障害を起こしたり、消化不良によって嘔吐や下痢の原因となることがあります。
症状がひどいと最悪命を落とす恐れもあるため、猫には与えないようにしましょう。
ブドウやレーズン
猫にブドウやレーズンを食べさせると、腎臓に悪影響を与える可能性が懸念されるといわれています。
といっても、実際に猫がブドウを食べて異常をきたしたという実例はあまりないそうですが(危険だといわれるのは犬)、
与えない方が良いでしょう。
ホウレンソウやナスなど、アクの強い野菜
ホウレンソウのようなアクの強い野菜には、シュウ酸と呼ばれる成分が多く含まれているため、
継続的に猫に食べさせると尿路結石の原因となることがあります。
ただし、野菜を茹でこぼすことでシュウ酸の量を減らせるため、
しっかりと茹でたものであれば少量なら与えても大丈夫です。
ほかにインゲンやブロッコリーなども生で食べさせるのはNGですが、
熱を通せば少量なら与えても大丈夫だとされています。
加熱すれば大丈夫な野菜って、結構たくさんあるのですよね。
キャベツは腎臓が悪い猫には与えない方が良い
キャベツは猫が健康なら少量与えるのは問題ありませんが、
リンがやや多く含まれているため、腎臓が弱っている猫の体には負担が大きい恐れがあります。
あと繊維が多いため、なかにはキャベツを食べさせることで胃腸の調子を悪くする猫もいます。
柔らかく煮て刻んだものをほんの少量なら影響はないと思いますが、
心配な場合は与えるのはやめておきましょう。
与えてはいけない野菜がたくさんありすぎて覚えきれないのなら…
猫に与えてはいけない、または与え方に注意が必要な野菜は結構たくさんあります。
それを一つ一つ覚えるのは大変です。
大丈夫かわからないものをうっかり食べさせてしまい、いちいち不安になるのも飼い主の精神面にはよくありません。
しかし思うに、
猫には必ずしも野菜は必要ではないのですから、色々な野菜を食べさせる必要はないのですよね。
なので、「これとこれ以外の野菜は与えない」という具合に、
食べさせても良い野菜の種類を限定してしまうのがおすすめです。
よく猫の食事に利用される野菜については、次項をご覧ください。
猫に与えても良い野菜
猫におすすめの野菜は、あくが少ない葉物や、食物繊維が豊富ないも類などです。
一部を除いて生で食べることもできますが、
生では消化しにくいことがほとんどなので、茹でたりレンジで加熱したりして与えましょう。
なお、ここでおすすめの野菜だとご紹介しているものでも、沢山食べさせて良いというわけではありません。
本来猫には野菜は不要だということを念頭に置き、どのような野菜もおまけ程度に与えるのが安全です。
レタス
水分がほとんどで食物繊維が少ないため、猫には与えやすい野菜です。猫自身も、シャリシャリした触感が楽しいのか、
好んで食べる子は多いようです。
ただしレタスも種類によってはカリウムやカルシウム等のミネラルが多く含まれるため、
食べ過ぎは尿結石の原因に繋がる恐れがあります。
また水分が多いためにお腹が膨れてキャットフードを食べなくなったり、
お腹が緩くなってしまう猫もいるため、控え目に与えるようにしましょう。
なお、人間が食べるドレッシングがかかったレタスをうっかり与えることのないように注意してください。
ドレッシングには玉ねぎのエキスが含まれることが多く、猫には有害です。
トマト・きゅうり
水分を多く含み、生食でも大丈夫な野菜です。
他の野菜と同じく、与え過ぎには注意しましょう。
大根・にんじん
消化が悪いので、茹でてからつぶして裏ごしするか、すりおろして与えましょう。
かぼちゃ・さつまいも
食物繊維が豊富です。
茹でてから小さく角切りにしたり、つぶしてトッピングしましょう。
便秘解消にもよく、またこれらを好む猫は多いですが、高カロリーなので与えすぎには注意が必要です。
キャベツ・ブロッコリー
ゆでてからみじん切りにするか、ゆででミキサーでピューレにしてから与えます。
キャベツは食物繊維やビタミンCが、ブロッコリーはカロテンが豊富ですが、どちらも少量に留めてください。
また先にも述べた通り、キャベツにはリンがやや多く含まれるため、腎臓が悪い猫には与えない方が良いでしょう。
あくまでもメインはキャットフード
猫には野菜は必要はありませんが、野菜好きな猫は多いです。
また野菜を食べさせることで便秘が解消されるなど、猫の健康にもメリットがありますが、
あくまでも栄養摂取のメインはキャットフードです。
食べてはいけない野菜を食べたり、お腹を壊したりといったリスクを避けるためにも、
色々な野菜の味を覚えさせる必要はありません。
例えばキャットフードにほんの少しだけ野菜を添えるとか、おやつに小量のかぼちゃやさつまいもを与えるなど、
あくまでも食事のおまけとしての扱いに留めましょう。