腎臓は血液をろ過し、体の中にたまった老廃物や塩分を排泄するはたらきがあります。
よく、腎臓が悪い猫はたんぱく質を控えなくてはならないといわれますよね?
それは、たんぱく質を多くとるとアンモニアなどの老廃物が多く作られてしまうから。
食事で摂取するたんぱく質は猫の体には欠かせないものですが、
体を構成する材料となるだけではなく、体に良くないものをも作り出してしまうんです。
老廃物を排出するのは腎臓の役目ですから、当然たんぱく質をたくさん摂ると腎臓に負担がかかります。
過度な負担をかけ続けて腎臓がダメージを受けてしまうと、ダメージを受けた部分はもう元には戻りません。
もちろん腎臓に負担をかけるのはたんぱく質だけではありませんが、
たんぱく質を控えるようにいわれるのは負担が大きいためです。
猫の腎臓病を予防する、もしくは進行させないためには、食事に気をつけることがもっとも大切だといわれます。
しかし、具体的にどうすればよいのでしょうか?
以下、詳しくみていきます。
猫に多い腎臓の病気とは?
猫には腎炎・腎不全などの腎臓病が多く、10歳以上で0.5%、15歳以上で20%に腎臓の問題が見られると言われています。
腎臓病の初期症状は判断しづらいですが、このような症状が見られたら病院で相談するようにしましょう。
・水を飲む回数が増えた
・トイレに行く回数が増えた
・嘔吐や下痢
・食欲がない
・体重が減った
重症化すると尿毒症を引き起こすことがあります。
尿毒症になるとおしっこを体外に出すことができなくなり、悪化すると死亡につながる恐れも。
腎臓病の早期発見のためには、定期検診を受けることが大切です。
腎臓に負担をかけにくい食生活のポイントを抑えよう
猫はもともと水分をあまり欲しがらない上に、たんぱく質が主食であるため、どうしても腎臓に負担をかけやすいといえます。
しかし、食事の内容に気をつけることでその負担を減らすことはできます。
水分をしっかりと摂らせるようにする
猫は水分の少ない地域で生息していた動物であるため、水をたくさん摂らなくても大丈夫な体のつくりになっています。
腎臓には血液をろ過して老廃物を排出する働きがあると述べましたが、その時に水分を排出しすぎてしまうと、水分摂取量の少ない猫には命取りになります。
なので、猫の腎臓は尿の成分を凝縮して排出することで、体外に出ていく水分を少なくできるようになっているんです。
ただ、水分摂取量が常に少ないと濃い尿を何度も作らなくてはならず、腎臓に大きな負担がかかってしまいます。
そうやって長期間腎臓に負担をかけ続けているうちに、腎臓病になってしまうというわけです。
昔の名残で、現在もほとんどの猫は水を積極的には欲しがりません。
しかし水の摂取量が少ないと、早くに腎臓を悪くしてしまう可能性が高くなるため、
体内の尿が濃くなりすぎないよう、水分を充分に摂れるように注意する必要があります。
具体的には、猫が1日に必要な水分量の目安は、体重kg×50mlです。
4kgの猫なら、1日200mlを与えるようにします。
【猫が1日に必要な水分量の目安】
体重(kg) × 50ml
ただ先ほども述べたように、猫って水をあまり飲みたがらないのですよね。
猫にもよりますが、目の前に水があって気が向いたら飲むけれど、なくても別に平気…なんて感じなので、
猫がいつでも水を飲めるように配慮する必要があります。
単純に水を設置しておくだけではなく、ドライフードの一部をウェットフードに変えたり、おやつでスープタイプのとろみのあるものを与えたりするなど、
ふだんの食事からも水分を摂れるような工夫をしましょう。
あと、どうしても進んで飲みたがらない猫には、100円均一で買える小さな注射器で口の端から飲ませるといいですよ。
猫に水を飲ませる工夫については以下でも詳しく触れていますので、あわせてご覧ください。
参考:猫にとって水を飲むことは病気予防にもつながる 水を飲みやすくする工夫をしてみよう
ミネラルウォーターは注意が必要
猫の健康を保つために水は欠かせませんが、水なら何でもよいというわけではなく、与える水の種類には気を配る必要があります。
猫の体のことを考えるあまり、浄水器の水やミネラルウォーターを与えようと考える飼い主もいるようですが、
場合によっては猫の体によくない可能性があるんです。
まず浄水器の水については、水道水に含まれる殺菌のためのカルキを除去するため、
通常の水道水よりも雑菌がわきやすくなっています。
猫の水って基本置きっぱなしにすることがほとんどですが、浄水器の水だと雑菌がわき、腐敗するリスクが上がります。
腐敗とまではいかなくとも、雑菌がわいた水を猫に飲ませるのは論外ですよね。
あと、ミネラルウォーターはその名の通り、ミネラルを含む水です。
体に良さそうな感じがしますが、猫にとっては特定のミネラルが過剰になってしまいやすく、
それが原因で尿路系の疾患にかかったり、腎臓に負担をかけてしまうことがあります。
製品によって含有されるミネラルの種類や量は異なるため、全てのミネラルウォーターが良くないというわけではないのですが、
かなりミネラルの量が多いものもありますので、基本的にミネラルウォーターはNGだと考えておいた方が良いと思います。
日本に多い軟水のミネラルウォーターならまだ大丈夫ですが、よく分からない場合は避けてください。
人によっては抵抗があるかもしれませんが、猫などのペットには水道水が安全だという声は多いです。
水道水にはカルキが含まれているために雑菌の繁殖が抑えられ、腐敗しづらいという点で浄水器に通した水などよりも安全性が高いんです。
カルキが猫の体に負担となるのでは…と心配される人もいると思いますが、水道水のカルキ濃度は人や猫に害がない程度に薄められているため、
あまり気にする必要はないでしょう。
ミネラル成分が多く含まれるフードを与えすぎない
腎臓には、体内のミネラル量を適正に保つ働きがあります。
なので、過剰にミネラルを含む食べものや、ミネラルのバランスが悪いフードを与えていると腎臓に余計な負担をかけてしまうことになります。
特にリンは他のミネラルに比べて過剰摂取になりやすいため、
ミネラルバランスがあまりよくないキャットフードや、人間用のチーズやかつお節、にぼしなどは与えないようにしましょう。
ちなみに猫が腎臓病にかかると、ナトリウム・カリウム・リンといったミネラルを排出する機能が低下するため、
ミネラルや老廃物の排出が追いつかず、体内の成分が濃くなって高血圧や多飲多尿が起こりやすくなります。
ミネラルや老廃物が上手く排出できないことによって、さらに腎臓のまだ正常に機能している部分に負担をかけてしまうため、
これまでと同じ食事だと腎機能の低下が加速度的に早まります。
なので腎臓病の猫には、腎臓に負担をかけやすいたんぱく質やミネラルの配合を抑えた「療法食」が用いられるのです。
腎臓用の療法食が腎臓の負担となりにくいのなら、まだ健康な猫の腎臓病予防にも使えるのでは?と考える飼い主もいるかもしれません。
たしかに療法食は、腎臓には負担がかかりにくい内容となってはいるのですが、
健康な猫にとってはたんぱく質が少なすぎるため、栄養が不足する可能性があります。
活動量の多い健康な猫の健康を保つには、良質なたんぱく質が不可欠です。
たんぱく質食材の摂取をむやみに減らすと、活動に必要な筋肉も落ちやすくなってしまいます。
なので、健康な猫には良質なたんぱく質がふんだんに使われたフードを選んであげるべきなのですが、
その際、リンが含まれる量や割合に気をつけましょう。
健康な猫の場合、リンやカルシウムの割合が「1:1.2」~「1:1.5」に保たれているフードを選ぶのが適切です。
これらのバランスが崩れると、尿路結石の原因になったり腎臓にも悪い影響を与えるため、気をつけましょう。
あと塩分(塩化ナトリウム)を過剰に摂取し続けることも腎臓に負担をかけるため、
塩分が比較的多いおやつ類(猫の)に気を付けることはもちろんですが、特に人間の食べ物は少しでもは与えないようにすることです。
良質なたんぱく質を与える
たんぱく質は腎臓に負担をかけますが、猫の主食でもあるため、健康な猫の食事からむやみに減らすことは危険です。
猫が1日に必要とするたんぱく質は、1kgあたり3~5g。
必要最低限の量を押さえつつ、良質なたんぱく質を摂るようにしましょう。
余談として、食材に含まれるアミノ酸バランスの指標となる「アミノ酸スコア」ってご存知でしょうか?
アミノ酸とは、たんぱく質が分解されてできた物質をさす総称です。
たんぱく質を摂取すると体内で一旦アミノ酸へとバラバラに分解され、必要に応じて体を構成するたんぱく質の材料として使われます。
必ず体外から摂取しなくてはならないアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼び、食材に含まれる必須アミノ酸のバランスを表すのが「アミノ酸スコア」です。
アミノ酸にはいくつかの種類があり、バランスよく揃っていないと体の材料として上手く利用できません。
アミノ酸スコアは、アミノ酸がその食材にどの程度バランスよく含まれているのかを示す指標となるもので、
このアミノ酸スコアが最高値である100に近づくほど、良質なたんぱく質食材だということになります。
逆にアミノ酸スコアが低い食材は、体の材料として使えるアミノ酸の割合が少なく無駄になるアミノ酸が多いため、あまり良質ではないといえます。
アミノ酸スコアの高い代表的な食材は、肉や卵、魚類です。
一方でアミノ酸スコアの低い食材は穀物や野菜などで、一応たんぱく質が含まれてはいるのですが、
体の材料として使えるアミノ酸は少なく、たんぱく質補給という視点からみると無駄が多いものだといえます。
体で利用できないアミノ酸は、老廃物として体外に排出しなくてはならないため、腎臓に負担がかかってしまうからです。
最適なアミノ酸バランスは動物によって異なるため、人用のアミノ酸スコアを猫に当てはめるのは正しくないかもしれませんが、
仮に人間と猫の最適なアミノ酸バランスが似たようなものであるのなら、
アミノ酸スコアの高い肉中心の食事は、猫にとって無駄がないものであるといえます。
ちょっと横道にそれてしまいましたが、猫に「良質」なたんぱく質を与えるのが良いといわれるのは、無駄になるものが少ないからなんですね。
これは健康な猫はもちろんですが、すでに腎臓を悪くしてしまっている猫こそ気を付けるべき点だといえます。
もちろんキャットフードを選ぶ際はたんぱく質の良し悪しだけではなく、ミネラルの含有量や合成添加物の有無もチェックするようにしましょう。
余分な成分が多いほど、腎臓が余計に働くことになるからです。
オメガ3脂肪酸の摂取もおすすめ
猫の腎臓病について調べていて、オメガ3という言葉を目にした方は少なくないのではないでしょうか?
オメガ3とはオメガ3脂肪酸のことで、いわゆる脂質の一種。
特に青魚の油や亜麻仁油などに多く含まれていますが、日常の食生活で十分な量を摂取することは難しく、意識して摂らないことには不足しやすいものでもあります。
このオメガ3脂肪酸がなぜ、腎臓に良いといわれるのか?
オメガ3脂肪酸には血液を流れやすくし、高血圧を緩和する作用があるといわれています。
腎臓を悪くすると高血圧になりやすく、また高血圧な状態が続くことは腎臓に大きな負担をかけてしまうのですが、
オメガ3脂肪酸によって血液が流れやすい状態を維持できれば、腎臓への負担も緩和できるというわけです。
難点は一般的な食生活では十分な量を摂取しにくいという点ですが、
オメガ3脂肪酸は、質の高いキャットフードに配合されていることが多いです。
また腎臓ケアフードには、はじめからオメガ3脂肪酸を配合しているものもありますし、
動物用のサプリメントとしても売られていますので、そういったものを利用すると良いでしょう。
ちなみに、カプセルタイプのサプリメントを猫に飲ませるのは、なかなか難しいです。
飲みこんでくれない場合は、カプセルを開けて中身をフードに混ぜるか、
水に溶かして注射器で飲ませてみましょう。
定期的な検査も大切
腎臓は、機能が低下していてもはっきりと症状には出ません。
初期は症状がほとんどなく、腎臓の70%程が機能しなくなった時点ではじめて症状が出てくるくらいなので、
普通に生活しているだけでは腎臓を悪くしていることには気づきにくいんです。
特に猫の腎臓病は、シニアと呼ばれる7歳ころから急激に増え始めるため、
その年齢になったら定期的に検査(尿検査や血液検査)を行うようにしましょう
早期発見し、初期のころに治療を開始できればそれだけ進行を抑えることができるため、寿命も伸ばすことができます。
日頃から猫の様子を観察することはもちろんですが、特におかしいところがなかったとしても、
ある程度の年齢になったら定期的な検査は必要なものだと考えるべきです。