日本人には、何でも「日本製を選べば安全」という意識があるようです。
絶対にとはいいませんが、確かに日本の製品は品質が均一で不良品も少なく、安全管理もきっちりとなされていることが多いです。
最近は海外製の製品が簡単に手に入りますが、あえて価格の高い日本製を選ぶ人が少なくないことからも、
日本製=クオリティが高いというイメージが一般的であることがうかがい知れます。
しかし、キャットフードに関しては、日本製=安全とは言い切れないのですよね。
一体なぜなのでしょうか?
以下、日本製キャットフードの真実について見ていきましょう。
「日本製」は本当に安全なのか?
日本製という言葉には、何故か安心感があります。
何でも国産のほうがいいという意識がどこかにあるのでしょう。
しかしキャットフード、いや、ペットフードの分野においては日本は遅れているのが現実なのです。
最近まで、日本にはペットフードの明確な安全基準がなかった
もともと日本では、ペットフードに関する明確な安全基準がありませんでした。
例えば、豚や鶏など人間が食べるものについては、添加物に一定の規制があります。
しかしペットに対しては、規制しようという働きが長い期間なされなかったのです。
ペットブームが加速していく中で、ようやくペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)が施行されたのは、
2009年6月のことでした。
これによって一定の規制…例えば農薬や汚染物質、添加物の上限値を定め、
ペットフードが製造される際は、含有量が上限値以下になるように作らなければならなかったり、
原材料や細かい仕様の表示義務が設けられたのです。
(参考:ペットフード安全法 基準規格等)
ではそれまではどうだったのかというと、メーカ独自の基準で製造されることがほとんどであったため、
それなりに高品質なフードもあれば、なかには食べ物とは思えないくらい粗悪な品質のフードも存在していたと想像されます。
なお、この法律が適用されるのは犬と猫用のペットフードです。
といっても、全てのフードが対象となるわけではありません。
対象となるのは総合栄養食や一般食、おやつ、サプリメント、ミネラルウォーターなどで、
「またたび」や「猫草」、お店などで与えられるフードや、持ち帰り用のフードは規制の対象とはなりません。
ペットフード安全法があるから安全…ではない
以前はともかく、今はペットフード安全法があるから安心なのでは?とお考えの方もおられるかもしれません。
確かに、規制が全くなかった頃に比べると安心かもしれませんが、
しかしそれでもまだ、人間の食べ物と比べると規制はゆるいのが現状です。
例えば、ペットフード安全法ではフードの酸化による劣化を防ぐために、
BHT、BHA、エトキシキンといった添加物の使用が認められています。
しかしこれらの添加物には、発がん性などの危険が認められていること、
またエトキシキンは人間の食材への添加や、農薬として利用すること自体が禁止されているんです。
人間の食材への使用が許可されていないのは、それだけの毒性が認められるからですが、
ペットフードに関しては上限量が定められてはいるものの、使うことは禁止されていません。
定められた上限値以下の配合であれば問題ないのでは、という見方もできなくもありませんが、
そもそも人間の食べ物への添加が禁止されている添加物を、なぜ犬や猫には与えても大丈夫となるのかが謎です。
もちろん、BHT、BHA、エトキシキンのような添加物が使われたフードを与えたからといって、
ただちに悪影響が出るわけではありませんが、ペットフードは長期にわたって与え続けるものです。
長期間与え続けることで、アレルギーなどの悪影響がでる可能性は全くないとはいえません。
それ以前に、猫や犬などのペットの健康を真剣に考える方にとっては、
いくら法律でOKと定められていたとしても、そのような添加物をペットに与えても良いとは思わないのではないでしょうか?
その日本製キャットフード、本当の意味で日本製ではないかも
日本製や国産という表示には抜け道があります。
「日本製」などと書かれた表示を見ると、普通は日本で作ったものだと考えてしまうかもしれませんが、
じつは最終的に加工した地が日本であれば、国産と表示していいことになっているのです。
例えば、海外の材料を使って作ったフードであっても、日本で詰めればそれは「日本製」「国産」フードということに。
あと、基本ペットフードには添加物の表示義務がありますが、
原材料にもともと含まれている添加物の表示までは行わなくても構わないため、
原材料自体が汚染されていたり、添加物がたっぷり使われていたとしても飼い主には知る由がありません。
日本製だから安心、と思って与え続けていたキャットフードが、
実は添加物たっぷりの輸入材料でつくられたフードだとしたら、ショックですよね。
【過去に実際に起きた中国産キャットフード問題】
2007年にアメリカで、中国産キャットフードを食べた猫や犬が腎不全を起こし、
死亡するという事件がおきたことがあります。
原因は、メラミンが混入した中国産の小麦グルテンがフードに使われていたことで、
報告を受けて該当のフードが回収されはしたものの、3000匹以上もの犬や猫が亡くなりました。
そればかりか2014年には、中国産のジャーキーを食べたことで多くの犬が亡くなる事件が起きており、
現在も中国産材料への不安を抱えている飼い主は少なくありません。
現状の日本の法律だと、素性のわからない原材料がキャットフードに使われていたとしても、
最終的な加工地が日本であれば日本製となってしまうんですよね。
ということは、原材料の由来を公表しているフードは別として、
日本でも上記のような事件が起こらないとは限らないということになります。
特に激安のキャットフードは、コストがかからない原材料が使われることがほとんどであるため注意が必要です。
安全なキャットフード 何を基準にして選べばよいのか
現状では、日本製のキャットフード=必ずしも安全だとは言い切れません。
もちろん、良心的なメーカーによって安全性にこだわって作られたフードも存在しますが、
先に述べたような懸念点がある限り、本当に安全であるかどうかを見極めるのは飼い主にとっては難しいところ。
しかしでは、一体どうやって安全性の高いキャットフードを選べばよいのでしょう?
人によってフードに求めるクオリティは異なるため、一概にどうとはいえないのですが、
安全性を重視するのであれば以下のような点を意識してみてください。
・安全性重視なら海外製キャットフードがもっともおすすめ
・日本製が良い場合は、内容がよくわかる製品を選ぶこと
・食いつきをフードの良し悪しの判断材料にしない
海外製、および日本製キャットフードといっても色々ありますが、
全体の比率で考えると、安全性においては海外製のキャットフードの方が分があるといえるでしょう。
以下、詳しく解説します。
海外製キャットフードの方が安全性への取り組みは徹底している
どんな製品でも、なぜか無条件に「日本製」を選ぼうとする人がいますが、キャットフードの安全性への取り組みに関しては、
ペット先進国と呼ばれるアメリカや欧米諸国の方が進んでいます。
安全性や規制など、動物そのものに関する法律が定められているだけでなく、
専門機関を置いてしっかりと品質管理されているのです。
例えば、海外製のキャットフードの原産国で多いのは、アメリカ・イギリス・ドイツなどでしょうか。
アメリカではFAD(食品医薬品局)とAAFCO(アメリカ飼料検査官協会)という2つの安全基準があり、
農務省やペットフード協会と連携して安全への取り組みが実施されています。
アメリカの有名なキャットフードメーカーには、
ナチュラルバランスやアズミラなどがあります。
また、動物愛護先進国として有名なイギリスでは、ペットフードメーカーの95%がPFMA(イギリスペットフード工業会)に加入しているほど。
原材料には人間も食べられるものの使用が義務づけられており、高い安全性を誇ります。
イギリスの有名なキャットフードメーカーには、カナガンやナチュラルチョイス、シンプリーなどがあります。
このように、ペット先進国と呼ばれる諸外国ではペットフードの品質管理が人間の食材並みに徹底されています。
海外製品に良いイメージをお持ちではない方、それなりにいらっしゃると思いますが、
各国のペットに関する安全性への取り組みを考えた場合に、
最終的に日本製ではなく海外製のフードにたどり着く飼い主は少なくないはず。
たとえ値段が高くても、飼い猫にとって安全で安心できるフードをと考えるのなら、日本製にこだわらないことです。
日本製キャットフードが全て悪いわけではない
どちらかというと、海外製キャットフード押しの私ですが(まあでも、私以外でもそうである方は多いと思います)、
最近は、日本製のキャットフードでも素材にこだわったものが登場してきています。
日本製よりも海外製キャットフードが称賛されるのは、日本のキャットフードにはペットフード安全法による規制があるとはいえ、
実際にはフードのクオリティの大部分は、各メーカーの基準に任されているという現状があるからでしょう。
ただ中には、原材料にこだわった良心的なメーカーのキャットフードも存在しており、
そういったフードであれば、海外製キャットフードと変わりないクオリティを持ちあわせていると考えられます。
まあ、選択肢の豊富さから考えると海外製になってしまうのですが、
国産の方が安心できるという飼い主は、原材料にこだわりがあるメーカーのキャットフードを選ぶと良いでしょう。
食いつきの良さだけで判断しない
キャットフードだけに言えることではないのですが、
日本製のキャットフードの多くは食いつきとコスパの良さを重視しており、味の種類も海外製に比べると豊富なのが特徴です。
しかし、嗜好性が高いということは色やにおいに手を加えているとも考えられます。
また、安さにはそれに見合った劣悪な材料が使われていると考えざるを得ないでしょう。
飼い主にしてみると、猫のフードへの食いつきが良いと嬉しくなってしまいますが、
食いつきが良いから「安価でも良いフード」だと決めつけるのは安易です。
多くの場合、価格と安全性は比例すると考えて間違いありません。
一方で、ペット先進国と呼ばれる海外製のキャットフードは厳しい基準をクリアし、安全性が高いのが最大の特徴です。
そういった製品はどちらかというと味よりも、安全性に重きを置いているところが多い傾向にあるといえます。
味の種類は日本製ほど豊富ではありませんが、自然に近い素材を厳選しているために、
かえって食いつきがよくなることも。
海外製のフードに変えてから、これまで食べていた安いフードを食べなくなったという声もきくことがあるくらいですから、
猫にも味の違いがわかるのでしょう。
いい素材を使っている分、それなりの値段がしてしまうところが難点ですが、
それでも猫の健康のためにキャットフードの安全性を重視したいという飼い主には、選ぶ価値がおおいにあります。
大切なのは、使われている素材をよく確認すること
日本製・国産なら安全だろう、という思い込みが、私たち日本人にはあるように思います。
しかし、日本のペットフードに関する安全基準はまだまだ遅れているのが現状です。
本当に安全なキャットフードを見極めるためには、海外製・日本製という枠を超えて考える必要があるといえます。
先にも述べた通り、海外製のキャットフードの方がしかるべき組織によって安全管理がしっかりとなされている分、
安心材料は多いです。
選択肢も幅広く、どのようなフードを猫に与えたいのかという目的をしっかりと持っている方にとっては、
より飼い猫にあったキャットフードを探しやすいというメリットもあります。
もちろん、日本製にクオリティの高いフードがないわけではないため、
国産を選びたい飼い主は、原材料にこだわりのあるメーカーのフードに絞って選ぶと良いでしょう。
法律によるペットフードの安全性への規制がゆるい分、厳しい目で見る必要はあるものの、
日本製の方が安心できるという方は少なくないと思います。
ただし、市販のフード(スーパーやドラッグストアにあるフード)は長期保存が必要だという性質上、
防腐剤などの添加物が使われていることが少なくありません。
よりこだわったフードが欲しいのなら、ネットで直販を行っているメーカーを探すと見つかりやすいです。
と、ここまで色々述べましたが、日本製、海外製にかかわらず、キャットフードを買う場合に製品説明だけを鵜呑みにするのはNG。
説明ではいいことばかり書いているのに、しっかりと添加物を使っているフードもあったりしますので、
購入前には、どのような原材料・添加物が使われているかの確認を怠らないようにしましょう。