猫が好んで食べる草の総称を猫草と呼びます。
猫草は猫によって好き嫌いが大きく異なりますが、必ず食べさせなければいけないというものではありません。
しかし、食べさせることに意味がないかというと、そんなこともないのですよね。
今回は猫が猫草を食べる理由や、食べることでどんな効果が得られるのか、
またその与え方について詳しく解説します。
猫が猫草を食べる理由とは
猫草とは、ひとつの種類の植物だけを指す名称ではなく、猫が好んで食べるイネ科の植物全般のことをそう呼びます。
お店では猫草という名称で売られていることが多いですが、その内容は必ずしも同じではないのです。
といっても、販売されているのは燕麦(えんばく)と呼ばれる猫草が圧倒的に多いです。
猫草はまったく食べない猫もいれば、大好きであればあるだけ食べてしまうという子もいるなど、猫によって好き嫌いが大きく分かれますが、
キャットフードのように絶対に与えなくてはいけないものではないため、
室内飼いの猫だと全く食べたことがない子もいるのではないでしょうか。
しかし食べさせていないからといって、栄養的に問題が起こるわけではないという点を考えると、
どちらかというと嗜好品的な扱いの食べものだといえるのかもしれません。
ただ動物には、体が必要とする食べもの(栄養)を自然と欲するという本能的な感覚が備わっていますから、
猫が猫草を欲しがることに意味がないわけではないと思います。
美味しいから食べるのではなく、猫の体が欲しているから食べるのだとみることもできますよね。
猫が猫草を食べる理由は現在でもはっきりとはわかっていないため、多くは想像でしかないのですが、
一般的には以下のような説が存在するようです。
不足栄養素を補おうとする本能からくるもの
ひとつは、普段の食事で不足している栄養素を補おうとする本能だとするもの。
かつて外で狩りをしていた猫は、獲物を丸ごと飲み込むことで、その獲物が食べていた草に含まれる栄養素を自然に摂取していました。
肉などのたんぱく質だけではなく、ビタミン類や鉄分など、様々な栄養素をとることができていたんです。
しかし飼い猫は、与えるフードによって摂取する栄養の種類が左右されます。
場合によっては栄養が不足してしまうこともあるため、猫草を食べるのではないかと考えられています。
ただし、現在販売されているキャットフードにはビタミンや葉酸などの栄養分がはじめから含まれていることが多く、
それらの栄養素が不足しているとは言い切れません。
となると、草の栄養を摂るために猫草を口にするという説は、あまり有力だとはいえなさそうです。
嗜好品として食べている
猫は、普段の食事はあまり噛まずに飲み込むことが多いのですが、猫草を食べるときはくちゃくちゃと口を動かしてよく噛もうとする仕草を見せます。
このことから、猫草の栄養が体に必要だから口にしているというよりは、食べる行為そのものを楽しんでいると考えられます。
人間で言うとガムを噛んでいるようなものでしょうか。
あるいは、葉の繊維を使って歯磨きをしているのかもしれません。
飲み込んだものを吐き出すために食べている
猫は比較的よく吐く動物で、その辺に落ちているものを飲み込んだり、胃の中に毛玉がたまったりするとすぐに吐き出そうとする習慣があります。
もともと、野生の猫は狩った獲物を食べる時に毛がついたままの肉を飲みこみますが、
吐く行為は、そうやって飲みこんだ余計なものを体外へ出すための習慣だといわれています。
この「吐き出す」という動作のきっかけにするために、猫草を利用しているという説があるのですよね。
実際、猫草を食べたあとに毛玉を吐きだす猫は多いです。
猫草と呼ばれる植物の多くは草の先端がとがっているため、飲みこむことは胃に刺激となります。
加えて、猫草の食物繊維が胃の中の毛を絡めとって毛玉状にすることにより、
胃の中に溜まった余計なものを吐き出しやすくするといわれています。
飼い主の中でも、猫に毛玉を吐き出させる目的で猫草を与えている…なんて方がいるくらいですから、
この説は有力かもしれません。
胃腸の調子を整えるために食べている
吐くことにも通じますが、食物繊維を摂取することで胃腸の調子を整えようとしているという説。
猫は水分をあまり摂らないこと、また肉食で食物繊維の摂取が不足しがちであるため、便秘をしやすいという性質があります。
狩りをしていた頃は獲物の羽や骨など消化できない部分があったため、便として排出される量も安定していましたが、
キャットフードを中心に食べる飼い猫は、ともすれば食物繊維が不足してしまいます。
食物繊維が不足すると、お腹が張って便秘になったり腸内環境も悪化しやすくなりますし、
なにより当の本人が不快なはず。
猫が猫草を食べるのは、そういった食物繊維不足を本能的に解消しようとしていると考えられます。
猫草の与え方と注意点について
猫草は必ずしも猫にとって必要なものではありませんが、与えることにはそれなりのメリットがあります。
猫草を食べることが猫の体にとってメリットとなるのなら、食べさせてみようかな…なんて飼い主もおられると思いますが、
与え方がわからない方もいますよね。
というわけで以下、与え方と注意したい点についてまとめてみました。
猫草はどこで入手する?
まず猫草の入手方法ですが、ホームセンターやペットショップなどで種か、猫草の鉢が売られているはずです。
よくみかけるのは、燕麦(えんばく)と呼ばれるイネ科の植物です。
燕麦って何?と疑問に思われる方もいるかもしれませんが、
燕麦の種子を加工したものがオートミールになるというと、どういう植物なのかがわかりやすいのではないでしょうか。
種から育てると大きくなるまでに時間がかかるため、すぐに猫に与えたい場合はある程度育った猫草の鉢を購入するようにしましょう。
ちなみに、燕麦以外の猫草には以下のようなものが存在します。
・大麦
・はとむぎ
・狗尾草(えのころぐさ=猫じゃらしのこと)
・鼠麦(ねずみむぎ)
いずれの植物もネットで入手可能ですが、猫には燕麦(えんばく)が一番好まれやすいようですので、
これから猫草を与えてみようという場合は、ホームセンターなどで燕麦の鉢を買ってくるのが手軽です。
自分の猫が食べるかどうかわからない場合は、少なめのタイプから試すようにしましょう。
あと多頭飼いなどで猫草の消費量が多い場合は、すでに猫草が育っている鉢を買ってくるのではなく種から育てるのがおすすめ。
鉢植えの猫草って長持ちしないことが多いので(枯れてしまう)、種を買って育てた方が割安です。
どのくらい頻度で与えれば良い?
猫草を与える頻度に特に決まりはありませんが、食べさせると高い確率で吐きます。
適度に吐くことは悪いことではありませんが、リビングだろうが机の上だろうがところ構わず吐くため、頻繁にだと飼い主の掃除が大変。
とりあえずは2日~4日に1回程度の頻度で与えてみて、猫の様子を見ながら変えていくと良いでしょう。
与える量は?
基本的に猫は、自分の体が必要としているだけの猫草を食べます。
野生の猫も、雑草として生えている猫草を必要なときのみ食べるんです。
イネ科の植物には雑草も多いため、田舎であれば探すのに苦労はしません。
なので与える量を飼い主が調整する必要はない…はずなのですが、中にはあればあるだけ食べてしまう子もいるため、
あらかじめ与える量を決めておくと無駄がありません。
必要な時にしか食べない猫の場合は、室内に鉢を置きっぱなしにしておくと良いでしょう。
自分で食べる量を調整するはずです。
なお、猫によって猫草の適量は異なります。
多めに食べても吐かない子もいれば、ちょっと食べすぎるとすぐに吐いてしまう子もいるんですよね。
なので最初は猫草を3~5本程度など、少量ずつ与えてみて様子を見てみましょう。
先にも書いたように、適度に吐くことは悪いことではありませんが、何度も吐くと飼い主の掃除が大変ですし、
吐きすぎると猫の体調が悪くなることもあるため、食べる量を調整してあげてください。
食べすぎても害はない?
猫草を食べすぎたとしても不要分は排出されるため、心配はいりません。
そもそも、猫草の量が限られた栽培キットで育てているのなら、それほど沢山の猫草を一度に与えることは難しいと思います。
ただ猫草を食べる量が多く、毛玉を吐き出す回数も多い猫の場合は、それだけ体内に毛がたまりやすいのだと考えられます。
猫草以外にも、ヘアボール(毛玉)ケア効果のあるキャットフードを与えるほか、日頃からブラッシングをこまめにしてあげましょう。
生後1年以内の子猫には与えない
猫草は食物繊維が多く、胃に負担がかかります。
消化器官が未熟な子猫に猫草を食べさせると、お腹を壊したり食欲が落ちてしまう可能性があるため、
与えるのなら生後1年を過ぎてからにしましょう。
また、これまでずっと猫草を食べていた成猫でも、
歳をとるにつれて消化機能が衰えてくると猫草が負担となることがあります。
猫の体調を見ながら、与える量を工夫してください。
道端の雑草を与えるのはおすすめしない
イネ科の植物には雑草も多いため、植物がたくさん生えている場所にお住まいであれば、
わざわざ買ってこなくとも猫草が手に入るかもしれません。
ただ、道端の草には農薬(除草剤)がかかっている可能性も否めないんですよね。
確実にその可能性がないとわかっているのならばともかく、地域によっては自治体によって薬がまかれている場合があるため、道端に生えている猫草を猫にあたえるのはお勧めしません。
猫には与えてはいけない植物もある
猫はなにも猫草だけしか食べないわけではなく、イネ科以外の観葉植物にも興味を示して食べようとすることがあります。
しかし猫にとっては害のある植物も存在するため、部屋の中に植物を飾っている場合は注意が必要です。
例えば観葉植物として室内に飾ることの多いアイビーやポインセチアには、猫にとって有毒となる成分が含まれていますし、
アザガオやアマリリス、マーガレットなど身近な植物にも、特定の部位に猫にとって毒となる成分が含まれています。
猫にとって害となる植物は、意外と多いです。
猫が食べようとするからといって、その植物が猫にとって安全だとは限らないため、
部屋に観葉植物を置く場合は猫に害がないかどうかをしっかりと確認してください。
参考:猫にとって毒になる、食べてはいけない植物リスト(All About)
猫草は無理に与える必要はない 猫が欲しがるようなら与えよう
何度も述べているとおり、猫草は猫にとって必ず必要なものではないため無理に与える必要はありません。
とはいえ、猫草を食べることによって吐くきっかけが得られるだけではなく、猫草が好きな猫にとってはストレス解消にもなります。
少量から試してみて、猫が欲しがるようなら習慣にしてあげると良いでしょう。