オイルを普段のスキンケアに使っている人、またこれから使おうと思っている人は少なくないと思います。
乾燥した肌というと、水分や油分が足りなくてカサカサしたイメージがありますよね?
そんな肌にオイルを使うことで不足した油分を補い、保湿できるかのように考えている人が多いのだと思いますが、実はオイルでは保湿はできません。
それどころか肌質によっては、オイルを保湿剤として利用することで、肌をより乾燥させてしまう可能性もあります。
今回はオイルで保湿ができない理由と、スキンケアにオイルを使用する場合の使い方について解説します。
オイルが肌の保湿に適しているというのはイメージ 実は保湿できない
肌の保湿に役立ちそうなオイルですが、それは単なるイメージ。
オイルの種類にかかわらず、肌の保湿にはほとんど役立ちません。
油分には膜を張ることで水分の蒸発を防ぐ作用があるはずなのに、なぜ保湿できないのかと疑問に思われている方もいるかもしれませんね。
以下をご覧下さい。
オイルで保湿できない理由
皮脂分泌が活発になると、肌の乾燥が和らぎますよね?
それゆえに、肌にオイルを塗ると乾燥を防げそうな感じがしてしまうのですが、
実は皮脂にもオイルにも肌の水分蒸発を防ぐ効果はあまりありません。
水分を角質層内に留めているのは、角質層にある細胞間脂質や天然保湿因子(NMF)と呼ばれる保湿成分であり、
皮脂ではありません。
皮脂にも肌の乾燥を防ぐ効果は多少はあるものの、その効果は肌に存在するたった数パーセントの水分蒸発を防ぐ程度。
オイルも皮脂と同様に、肌に塗ったとしても水分蒸発を防ぐことはできないんです。
乾燥肌の方ならなんとなくわかるのではと思いますが、
例えば、お風呂あがりや洗顔直後のしっとりとした肌にオイルのみを塗ったとしても、しばらくすると乾燥してきます。
お風呂や洗顔で角質層内に入った水分が、時間の経過とともに蒸発してしまうからです。
オイルを塗ることで肌表面はしっとりとうるおった感触になっているかもしれませんが、水分蒸発は全く防げていません。
オイルに保湿効果があるのなら水分を留められるはずなのですが、そうはなっていないんです。
一方でオイルだけを塗るのではなく、もともと水分量が多い肌や化粧水を塗って水分を十分に与えた肌に、オイルのような油分を塗った場合はどうでしょうか?
この場合は、もし肌の角質内に与えた水分を留められるだけの保湿成分が存在するのなら、潤いのある肌を保てるでしょう。
保湿成分とは、先ほども説明したように細胞間脂質や天然保湿因子(NMF)のことをさします。
水分が留められるかどうかは保湿成分の有無によって左右されることであり、
オイルを塗っているかどうかはあまり関係がないんですね。
塗る意味がないというわけではありませんが、水分を守ることはオイルの役割ではないのです。
このようなオイルの性質をきちんと理解しているのなら、オイルをスキンケアに利用するのも悪くないでしょう。
しかし、オイルで肌の水分を閉じ込められると勘違いしたままスキンケアに利用するのは、場合によっては危険かもしれません。
オイルって塗るとすぐに肌がしっとりしますから、それで十分に保湿ができていると勘違いしやすいんです。
実際は水分が足りてないことが多いわけですが、
しっとり感からオイルで保湿は十分だと思い込み、全体的にライトなスキンケアを続けることで肌の乾燥を悪化させてしまう恐れがあります。
肌の水分が逃げないように油分で蓋をする…というのは嘘なの?
一般的なスキンケアにおいて、「化粧水のあとに水分が逃げないように油分で蓋をする」なんてこと、よく見聞きしますよね?
しかし前項で、オイルで水分蒸発は防げないと述べたとおり、油分を付けるだけでは肌から水分が逃げるのを完全に防ぐことはできません。
ではなぜ、「水分が逃げないように油分で蓋」なのでしょうか?
ひょっとすると、余計に化粧品を買わせるためのメーカーによるセールストークなのかも?なんて思われた方もいるかもしれませんね。
ここでいう「水分が逃げないように油分で蓋」について正確に理解するには、まず皮脂の役割を理解する必要があります。
そもそも、皮脂が分泌されるのは肌を外部刺激から守るためであり、肌に水分を留めるためではありません。
もちろん、皮脂がないよりはあった方が乾燥はしづらいのですが、
肌の表面に皮脂が十分にあったとしても、角質層内の保湿成分が不足した状態では与えた水分は逃げてしまいます。
これだけを聞くと、「水分が逃げないように油分で蓋」というのは正しくないことになります。
油分である皮脂で蓋をしても、肌から水分は逃げてしまうのですから。
じゃあ、なんのために皮脂は分泌されるの?なんて疑問が浮かびますが、
皮脂(油分)は肌の表面でクッション的な役割を果たしています。
肌の上に皮脂(油分)の膜があるおかげで、外部からの刺激を和らげることができたり、
肌表面を柔軟に保つことで、表皮が乾燥して荒れてしまうのを防ぐことができているんです。
もし、皮脂分泌が極端に少ないと肌の表皮が荒れてささくれたようになり、バリア機能が低下したり、
肌の角質層内の保湿成分が外部に流出しやすくなってしまうため、結果的に肌内に水分を留められなくなって乾燥しやすくなります。
乾燥するとさらにバリア機能が弱まり、さらなる肌トラブルを招きやすくなってしまいます。
皮脂(油分)が肌の乾燥を直接防いでいるわけではありませんが、間接的には乾燥を防ぐ役割を果たしているんですね。
スキンケアの最後に油分で蓋をするのは、洗顔などで落ちた皮脂を補う意味あいがあります。
「水分が逃げないように油分で蓋」というのは、多分そう表現した方が多くの方に理解しやすいからそう言われているだけで、
この表現自体は正しいとも正しくないともいえるでしょう。
ただ、少なくとも頻繁にメイクをしたり洗顔を繰り返している肌には、皮脂を補う油分が必要。
オイル(油分)で直接水分の蒸発を防ぐことは難しいですが、だからといって不要なわけでもなく、
大切な役割を果たすものであることには違いありません。
オイルだけのスキンケアが良いと聞いたのだけど…
たまに、オイルだけを使うシンプルなスキンケア方法を耳にします。
いわゆる肌断食とも呼ばれるスキンケア方法で、洗顔後にオイルを塗るだけだったり、ワセリン(油分)だけを使うこともあります。
基本、化粧水や乳液は使用しません。
人間の体って不思議なもので、甘やかせば甘やかすほど機能が低下しやすくなります。
例えば、肌にリッチな化粧品を使えば使うほど、肌が自力で潤う力が低下するんです。
肌が自力で潤わずとも毎日化粧品が潤してくれるのですから、それに甘えてサボってしまうというわけです。
肌断食では、一定期間シンプルなスキンケアを続けることで、そんな肌の機能をリセットします。
時間はかかりますが、根気よく続けることで肌本来の力がよみがえり、
赤ちゃんのような美しい肌に生まれ変わることができるといわれているようです。
ただ正直に言って、肌があまり強くない人や、乾燥肌の方にはおすすめできません。
もし乾燥肌の方がいきなりオイルのみの肌断食を実行したとしたら、高い確率で肌の乾燥が悪化するでしょう。
乾燥が悪化することで肌のバリア機能が低下し、炎症などの肌トラブルを起こしやすくなったり、敏感肌になってしまうかもしれません。
乾燥がすすむと紫外線のダメージなども受けやすくなるため、将来の肌にも良いものではありません。
もちろんその過程を乗り越えれば、美しい肌が待っているのかもしれませんが、ひょっとすると肌が荒れたまま戻らない可能性もあります。
何の保証もないのです。
シンプルなスキンケアが悪いわけではありませんが、肌質を選びます。
オイルだけのスキンケアを実行する際は、自分の肌状態がどうであるのかをしっかりと見極めるようにしましょう。
スキンケアでのオイルの正しい使い方
オイルでは肌の保湿はできないと述べましたが、正しく使うのであれば、スキンケアに取りいれる価値は十分にあります。
ここではスキンケアでのオイルの立ち位置と、オイルの正しい使い方について解説します。
基本的に肌に必要なのは水分と保湿成分
基本的にスキンケアで肌に必要なのは、水分とそれを肌に留めるための保湿成分で、オイルなどの油分はおまけといっても間違いではありません。
先に述べたことの繰り返しとなりますが、もともと肌の角質層内には細胞間脂質や天然保湿因子(NMF)といった保湿成分が存在します。
ライトなスキンケアでも大丈夫な肌質の人って、これらの保湿成分が十分に備わっているからなんですよね。
逆に、化粧水やクリームをたっぷり塗っているのに乾燥しやすい…なんて人は、角質層内の保湿成分が不足している可能性が高いんです。
角質層内の保湿成分が不足した乾燥肌に、単なる水分とオイルだけを与えても乾燥するのは、水分を留めることができないから。
乾燥肌の方ほど、保湿成分重視のスキンケアが必要なんです。
しかし、一体どのような保湿成分を使えばよいのでしょう?
保湿成分と一口にいってもさまざまな成分が存在しますが、
乾燥肌向けの化粧品に使われる保湿成分として代表的なものが「セラミド」です。
セラミドは、肌の角質層内に存在する細胞間脂質の主成分。
肌の角質層に存在する水分のうちの80%以上をキープしているのは、このセラミドなんです。
肌が乾燥しやすい人は、セラミドが間違いなく不足しています。
まあ実際は、セラミドが不足している場合には、天然保湿因子と呼ばれる成分も不足していることがほとんどなんですけどね。
なので乾燥肌の保湿には、それらを補える化粧品の利用が向いています。
上記はいずれにも、人の肌の角質層内に存在するセラミドと同じ働きをする「ヒト型セラミド」が配合されており、
保湿機能の向上が期待できます。
セラミドとはいってもさまざまな種類があり、どのセラミドでも乾燥肌に向いているというわけではないため注意が必要です。
ヒト型セラミド配合の化粧品を選ぶことが大切です。
セラミドをはじめとする保湿成分は、年齢とともに肌から減少していくのが普通。
あとアトピー体質の方は、もともとセラミドを作り出す代謝機能が弱いため、セラミドが不足しやすいといわれています。
40代になる頃には、セラミドの量が20代の半分以下にもなるそうですから、
乾燥しやすくなってきたらセラミド、と頭に留めておくと良いかもしれません。
スキンケアにオイルを利用する場合は、
不足した保湿成分を補える化粧水などを使ったうえで、必要に応じてオイルをプラスしましょう。
好みのオイル数滴を手のひらにとり、両手をすりあわせてあたためてから顔を覆うように薄くつけるのがコツです。
ほとんど付いていないのでは?と思うくらいの控えめな使用でOKです。
あとクリームなどを利用している場合は、オイルは付けないでください。
肌に使いやすいオイルについては、次項でご紹介しています。
スキンケアに向くオイルの種類について
スキンケアに使えるオイルは沢山ありますが、オイルによって含まれる成分や脂質の種類が異なるため、
その内容によって合う肌質と合わない肌質があります。
以下、スキンケアによく利用されるオイルを肌質別にまとめてみました。
全ての肌質に使えるオイル
【全ての肌質に使える】
・ホホバオイル 安定性が高く酸化しにくい
・アルガンオイル ビタミンEが非常に豊富
・スイートアーモンドオイル 敏感肌にも使いやすい
全ての肌質に使えるオイルの中でも、特に人気が高いのがホホバオイル。
ホホバオイルは「オイル」とは呼ばれるものの他のオイルとは成分がやや異なり、液状ワックスエステルと呼ばれる成分が多く含まれています。
ワックスエステルは皮脂にも多く含まれる成分であり、それゆえに肌質関係なく肌広く利用することができる万能オイルです。
安定性が高く酸化しにくいので扱いやすく、
多くの方におすすめです。
アルガンオイルはビタミンEを豊富に含むことより、アンチエイジングを期待してスキンケアに利用する方が多いオイル。
比較的高級なオイルで、保湿力が高いのにもかかわらずベタつきが気になりにくいため、使用感が良いというところで人気があります。
全ての肌質に使えるオイルですが、どちらかというと乾燥しやすい肌に向いています。
さらにスイートアーモンドオイルも、ビタミンEを豊富に含むオイルです。保湿作用をはじめ、抗炎症作用も期待できます。
刺激性が低いため、赤ちゃんや子供にもよく利用されます。
やや酸化しやすいため扱いには注意し、開封したオイルは早めに使い切りましょう
乾燥肌に向くオイル
【乾燥肌】
・オリーブオイル オレイン酸が70~85%、ビタミンEを豊富に含む
・椿油 オレイン酸が80~90%、安定性が高い
・アボカドオイル オレイン酸が70%、粘性が高め
・セサミオイル 抗酸化物質を豊富に含み酸化しにくい
・ローズヒップオイル リノール酸やα-リノレン酸が豊富、酸化しやすい
乾燥肌の方に向くオイルには、オレイン酸が多く含まれる傾向があります。
オレイン酸は皮脂全体の40%をしめる脂肪酸で、肌の上に存在する成分であるため、特に皮脂不足で乾燥気味な肌質の方には、オレイン酸主体のオイルは使いやすい傾向にあります。
一方で、もともとオレイン酸が多いと思われる皮脂分泌が活発な肌質の方が利用すると、ニキビや吹き出物ができる原因になることがあるため、オイリー肌の方には向きません。
お値段や扱いやすさで考えると、オリーブオイルが手軽。
椿油も酸化しづらくて管理が楽なのと、また顔や体だけじゃなく頭皮や髪のケアにも向いています。
セサミオイルはオレイン酸とリノール酸を約40%ほど含むオイルで、脂肪酸の性質から見ると酸化しやすいはずなのですが、セサミオイルならではの抗酸化成分を多く含んでいるため、その効果で酸化しにくくなっています。
抗酸化成分は、スキンケアにも良い影響を与えるでしょう。
そしてローズヒップオイルは高価であるのにもかかわらず、美容成分を多く含むことより、スキンケアに用いられることが多いオイルです。
ビタミンCが豊富で肌への馴染みも良いのですが、酸化しやすい性質を持つため利用の際は扱いに注意が必要です。
脂性肌に向くオイル
【脂性肌】
・ココナッツオイル ラウリン酸が豊富
ココナッツオイルは、数あるオイルの中でも特にラウリン酸を多く含むオイルです。
ラウリン酸には抗炎症や抗菌作用があるとされており、例えばニキビや吹き出物が気になる肌や、脂性寄りの肌に向いています。
補足として、ラウリン酸を多く含む石鹸は脱脂力が強くなりやすい傾向にあります。
それは、ラウリン酸が皮脂と細胞間脂質になじみやすい性質を持っており、
洗い流すときに肌の脂質を落としすぎてしまいやすいからです。
それゆえに、ラウリン酸は肌に刺激が強いなどといわれることがあるようなのですが、ラウリン酸自体の刺激性が強いわけではありません。
石けんのように、洗浄剤としてラウリン酸を利用する場合に油を落としすぎてしまうことはありますが、
スキンケアオイルとして利用する場合は、さほど気にする必要はないでしょう。
お得にスキンケアオイルを購入できるお店
スキンケア用のオイルはさまざまな店舗で購入できますが、
モノによっては結構高価なのと、メジャーではないオイルだとなかなか見つからない場合も少なくありません。
そこでオイルの購入先としておすすめしたいのが、化粧品材料の専門店であるマンデイムーンさん。
私自身もよく利用させていただいています。
基本マンデイムーンさんの製品は、化粧品の原材料用というスタンスで売られているものなのでパッケージは簡素ではあるのですが、
一般的な商品よりもかなりリーズナブルなんです。
種類も豊富ですし、最小10mlの少量から購入できるところも魅力。
オイルを試してみたいけどいきなり沢山買うのは不安…なんて方にも向いています。
これからスキンケアにオイルを取りいれようという方は、是非チェックしてみて下さい。
以上となります。
肌の保湿スキンケアは、1に水分と保湿成分を補うこと、それから必要に応じてクリームやオイルによる保湿を行うのが基本。
オイルなどの油分によるケアよりも、水分を補給し、かつその水分を留めるスキンケアが大切だということを覚えておいてください。