人間がそうであるように猫にも好き嫌いがあり、好きなフード以外は頑として食べないことがあります。
そんな飼い猫をみて、「この子は○○が好きではないのかも」なんて思いこんでしまう人は少なくないのですが、
実はそのような猫の好き嫌いの多くは、飼い主のフードの与え方によって起きています。
そして一度食べものに好みができてしまうと、それを修正するのは本当に大変なのですよね。
今回は、フードの好き嫌いを作らないための適切なフードの与えかたと、
すでに好き嫌いができてしまっている猫への対処法について解説します。
猫を偏食家にしないためのフードの与え方
猫の好き嫌いは元々あるものではなく、私たち飼い主のフードの与え方によって作られるものです。
逆にいうと、子猫の頃からフードを与え方を工夫することで、食べものの好き嫌いを作らないようにもできるんです。
以下、その方法についてまとめてみました。
だらだら食いをさせない
与えられたフードを一度に食べきれず残した場合、それを放置していると、猫は好きなときに好きなタイミングでだらだら食いをするようになります。
また、フードを与える時間がバラバラな場合も、だらだら食べるようになることが多いです。
「いつでも食べられる」という状況になると、猫は自分の好きなフードだけを食べる偏食家になりやすくなるんです。
フードを与える時間はできるだけ規則正しく、
またフードを食べ残した場合は、たとえ少ししか食べていなかったとしても一旦お皿を下げるようにしましょう。
人間の食べ物の味に慣れさせない
猫が欲しがるからといって、人間の食べ物を与えていませんか?
人間の食べ物は猫にとっては塩分や糖分が強く、猫の小さな体には大きな負担です。
最初は「少しだけだから」と思って与えてしまうのかもしれませんが、「少しだけだから」が何度も重なると、猫はその味を覚えてしまいます。
そうすると、キャットフードを食べなくなってしまうことがあるんです。
欲しがる姿が可愛いから、我慢させるのはなんだか可哀想だからといって、人間の食べ物を気軽に与えてはいけません。
体に良くないものの味を覚えてさせてしまう方が、可哀想です。
できれば子猫の時期にしつける
もう成猫になってしまっている場合、これは難しいのですが…。
猫の食べ方や好みの多くは、1歳未満の子猫の時期に形成されると言われています。
この時期に猫が欲しがるたびにフードを与えたり、猫が好むおやつやウェットフードなど、栄養よりも嗜好を重視したフードばかり与えたりすると、食べたいものしか食べないわがまま猫に育ってしまいます。
できれば子猫の時期に正しい食習慣を教えこんでおくと、あとあとが楽です。
猫の好き嫌いを治すにはどうすればよい?
猫の好き嫌いを治すには根気が必要です。
猫は非常に執念深く、たとえお腹が空いていたとしても、好きなフードが出てくるのを何時間でも待ちます。
猫の好むフードをいつまでも出さないと、中には気に入らなくて暴れたりいたずらする子もいますが、だからといってなびいてはいけません。
以下、嫌いなフードに慣れさせるためにできることを一通りあげてみました。
猫の性格や嗜好によって効果がある場合とそうでない場合がありますので、飼い猫にあった方法を試してみてください。
ドライフードの固さやにおいを工夫する
猫は固いものや大きいものが苦手で、トロッとした液体を好みます。
ウェットフードを頻繁に与えていて、ある時からドライフードを食べなくなってしまうというのはよくあるパターンです。
ウェットフードもたまには良いものですが、ドライフードに比べるとコストがかかるため、
これしか食べてくれないと家計は大変です。
また、ドライフードを食べなくなってしまうと、災害などが起きて好きな食べものを選べない場合にとても困ることになるかもしれません。
ドライフードを食べなくなってしまった猫には、いきなりウェットフードを与えるのではなく、お湯でふやかして柔らかくしたドライフードを与えてみてください。
ドライフードの上にほんのちょっぴり、かつお節やにぼし粉を振りかけてもいいでしょう。
単に食べやすいからという理由でウェットフードばかりを欲しがっているのであれば、食べてくれる可能性が高いです。
また猫はにおいに敏感であるため、ふやかしたドライフードや缶詰を少しだけチンしてにおいを立たせると、食べてくれる場合があります。
ただし、あたためすぎないように注意しましょう。
一般的には35℃前後くらいが、猫にとってもっともおいしく感じる温度だとされています。
レンジだと、フードのまわりは冷たいのに中が熱い…なんて温度ムラができやすいため、気をつけてあげてください。
好きなフードに嫌いなフードを混ぜ込む
好きなフードから一気に嫌いなフードに切り替えても、食べてくれる猫はまずいません。
お皿にあけたフードのニオイだけかいで、プイとしらんぷりしてしまう猫が大半なのではないでしょうか。
この場合、まずは好きなフードに食べさせたいフードを少量ずつ混ぜ込んでみてください。
最初から多くしすぎると不審に思われてしまい、嫌いなフードだけを避けて食べたり、
逆に全く食べなくなることもあるため本当に少しずつです。
わからないくらいに割合をだんだんと増やしていくことで、猫もその味に慣れていきます。
思い切って別のフードに変えてみる
食べさせたいフードをどうしても食べてくれないようなら、思い切って別の種類のフードに変えてみましょう。
キャットフードといっても様々な種類があります。
絶対に最初に与えていたフードしかダメ、なんてことはないはずです。
フードの種類を変えるのは、今までのフードの味に飽きていた場合には効果があります。
きちんと与えたフードを食べられているのなら、たまにおやつや缶詰を与えるのも良いでしょう。
肝心のフードを食べていないのにおやつや缶詰を与えたり、
好き嫌いを助長してしまうような気まぐれな与え方はNGですが、週に1回だけと決めて与えるのは悪くありません。
そして与えると決めた日以外は、いくら猫が欲しがっても与えないことが大切です。
出したフードを食べなかったら、放置せずお皿を下げる
食べないからといって好きなフードをすぐに与えてしまうと、
猫は「気に入らないエサのときは食べなければ好きなエサが出て来る」と判断することになります。
出したフードを食べないときは、そのまま放置せずにお皿を下げてしまいましょう。
次のエサの時間には、また同じ種類のフードを出します。
つまり、猫と自分との根比べです。
いずれお腹が空き、嫌いなフードでも手のひらを返したように食べてくれるようになるはずです。
なお、1日エサを抜いたぐらいでは問題はありませんが、水は十分に与えるようにし、体調が悪そうな時には無理をしないようにしましょう。
好き嫌いではなく、別の原因で食べないこともある
猫がフードを食べないとき、好き嫌い以外にも原因が隠れていることがあります。
猫ってデリケートな動物なんですよね。
ちょっとした理由や環境の変化でも、食欲が落ちて食べなくなることがあります。
例えばストレスが溜まっている、環境が落ち着かない、水や器が清潔でない、何らかの病気やアレルギーがあるなどです。
そのような原因を見つけるのは難しいかもしれませんが、フードを与える環境を変えてみたら、
すんなり食べてくれるようになった…なんてことは珍しくありません。
もし病気やアレルギーが原因なら、フードを食べない以外にも普段とは様子が違ったところがあるはずなので、
猫を良く観察するようにしましょう。
以下、嫌いだからという理由以外で、猫がフードを食べないときに考えられる原因についてまとめてみました。
食事環境がよくない
常に人間に見られていたり、多頭飼いでいつも競争だったり、エサ置き場が明るく広い場所だったりすると猫は落ち着いて食べることができません。
特に普段から神経質な子、おとなしい子にその傾向があるようです。
多頭飼いの場合は、他の猫とは別の場所で食べさせてみましょう。
また落ち着かなくて食事ができない場合は、廊下や部屋の隅など、暗くて狭い場所にお皿をおくようにすると安心して食べ始める子もいます。
ストレスによって食欲が落ちている
猫はとてもデリケートな生き物です。
引っ越しや模様替え、新たに猫を迎えた、人間が旅行に行ったなど、環境の変化があるとストレスを感じて食欲が落ちることがあります。
何が猫にとってストレスなのかがわかっている場合は、ストレスを感じなくなるような工夫を飼い主がしてあげることです。
例えば引っ越しをした場合は、新しい部屋の中に猫が落ち着ける環境を作ってあげたり、
新しい猫を迎え入れた場合は、とりあえず一時的に生活スペースを分けるなど、先住猫のストレスを軽減できるような工夫が望ましいです。
ストレスが一過性の場合は、ストレスが解消されれば食欲は戻ることがほとんどです。
夏バテ気味
猫の食欲には一定の周期があり、ほとんどは夏に落ちて冬に活発になります。
人間も夏になると、バテて食欲が落ちる場合がありますよね?
猫は暑さに弱いため、人間と同様夏バテで食欲が落ちることがあります。
一時的に食べる量が減ったとしても、涼しくなって食欲が戻るようなら心配しなくても大丈夫でしょう。
少量しか食べられないのが心配なら、嗜好性の高いウェットフードを取りいれてみても良いかもしれません。
加齢によって食べられる量が減っている
猫は10歳を超えるとシニア猫や老猫などと呼ばれますが、そのくらいの歳になるとだんだんと食べられる量も減っていきます。
人間と同じように、猫も歳をとることで代謝が落ち必要とするカロリーが減っていくため、食べる量は減るのが普通です。
逆に心配だからといって食べさせすぎると肥満になるリスクもあるため、
年齢や活動量に応じ、フードの種類や量を調整することが必要です。
アレルギーや病気によって食欲が落ちている可能性
何らかの理由で猫の食欲が落ちていたとしても、全く食べものを受けつけないということはあまりありません。
猫の食欲が落ちたときは水をちゃんと飲んでいるか、排泄物の様子に変化はないかなど、食欲以外の症状に注意してください。
もし丸1日以上水も何も口にしようとしないなら、体調不良が疑われます。
水を飲まない状態が長引くと脱水症状を起こすこともあるため、2日以上続く場合は病院につれていくようにしましょう。
一方でフードを食べたあとに嘔吐や下痢があり、皮膚をひっかくような仕草がみられたら、食物アレルギーを起こしているかもしれません。
アレルゲンとなっている食物をきちんと消化できなかったり、アレルギー反応によって皮膚にかゆみが出たりするのです。
アレルギーを起こしているせいで、フードを食べなくなってしまっている可能性があるため、
この場合はアレルギーの原因となっている食べものを含まないフードに変える必要があります。
アレルギーの原因がわからない場合、アレルゲンの特定には検査が必要です。
ただ、猫の食物アレルギーは、動物病院で検査を行っても原因がはっきりとしないことが少なくないのですよね。
検査で原因が特定できない場合は、猫にさまざまなフードを与え、
アレルギー症状の有無で原因となる食べものを特定していく方法(除去食試験・負荷食試験)をとることになりますが、
アレルゲンの特定までには時間がかかります。
アレルギーを発症する原因は食べもの以外にもあるため、必ずしもフードが原因だとは限りませんが、
普段から安価で粗悪なフードを多く与えていると、含まれている穀物にアレルギーを起こしたり、
添加物に過敏になってアレルギー症状が出ることも少なくはありません。
アレルギーや病気予防のためにも、クオリティが定かではない安価なキャットフードは、できるだけ選ばないようにしたいものです。
原因はともかく食欲不振が長引くようなら病院へ
猫がエサを食べなくなる背景には、単純にフードが気に入らないといったものから、体調不良やアレルギー、ストレスといった原因が隠れていることも。
猫の食欲不振の理由をしっかりと見極めることが大切です。
もし明らかに様子がおかしかったり、工夫をしているのにもかかわらず何日も食欲不振が続くようなら、病院で相談するようにしましょう。
猫の偏食に甘やかしは厳禁!メリハリが大切
猫の好き嫌いは生まれ持った個性ではなく、ほとんどは飼い主が甘やかした結果です。
別に良いのでは?なんて思われる方もおられるかもしれませんが、
食事は猫の健康に大きな影響を与えるものです。猫が欲しがるものばかり与えるのは考えもの。
また、もし飼い主に不測の事態が起きたり災害のような非常事態が起きた場合に、
好き嫌いが多いと何かと苦労することは目に見えているため、食べられるフードの選択肢は多いほうが安心です。
日頃から決まった時間にエサを与える癖をつけて守るようにし、食べものに関しては甘やかさないようにしましょう。
とはいえ、嗜好品を全く与えてはいけないというわけではありません。食事に響かない程度になら、時々はおやつを与えても大丈夫です。